CDのタイトルはラグビーのスローガンでも知られるフレーズですが、こちらのCD、オビの文句によれば『アヴァロン・レーベル所属アーティストによる東日本大震災チャリティ・コンピレーション・アルバム。新曲、未発表曲、カヴァー曲で構成。』とのこと。
自分はチャリティ目的というよりむしろRIOTの曲が収録されていることから購入。
発売日は2011年6月22日だが、実際に購入したのは数年後のコト(良く覚えとらん)。
本作にも収録されているRIOTの「Wings Are For Angels」が収録されている『Immortal Soul』アルバムの発売が2011年10月19日だったので、4か月前に新曲を聴くことが出来たわけだ。
当時のRIOTといえば、THUNDERSTEEL時代のラインナップでアルバム製作している話題で持ちきりだった。
当然新作を早く聞きたかったのだが、「どうせならフルレングスアルバムで」という思いが強かったため、本作の購入は見合わせていた。
なぜ後年になって本作を購入したのか全く覚えていないのだが(恥)、RIOTの楽曲はアルバム収録と同テイクで特筆すべきことはなく、CDラックに眠っていたものを掘り起こして改めてじっくり聞いてみた。
するとビックリ。
各曲のクオリティーが高いだけでなく、それなりにキャリアを積んだアーティストが(自分が知らなかったヒト/バンドも多いが)目白押し。
記録のために本エントリーを記す。
まず、本CDの性格上、各アーティストからのメッセージも収録されている。ほとんどが自筆の文章で。
とにかくそのスピード感に驚かされる。
東日本大震災からわずか3か月でのリリースとなる本作。
現代ではE-MailでもSNSでもFAXでも(古い?)いくらでも高速な通信手段が存在する。
とはいえ、多忙なアーティスト全てから丁寧なメッセージを収集すること自体が大変な作業だったと推察される。
加えてバンド写真にサインもしてくれるというオマケつきだ。
(RIOTのようにメンバーの住まいがアメリカ国内で離れているバンドでさえも、だ)
良く知るRIOTに関して言えば、バンドのフォトセッションは他の媒体で見た記憶がないので、もしかするとアルバム製作作業中に撮影したものかもしれない。
当時の Mark Reale は闘病中で(その後死去)、ギタープレイもほとんど Mike Flyntz に任せていたとどこかで聞いたことがある。それを考えれば日本のためにフォトセッションに参加、他のメンバーも集まってくれたのかと思うと涙がチョチョ切れる。
ところで、海外のアーティストが日本に魅力を感じてライヴレコーディングするというハナシはメタル界以外でも良くある事。有名どころではQUEENとかシンディ・ローパーとか・・・
加えて日本人のKindness はアーティストだけでなくスタッフも感じることが出来るだろうし、日本びいきになる外国人は多いね。
今回の各アーティストが場合によっては新曲を、そうでなくても未発表楽曲や音源を提供してくれ、手書きメッセージにも提供してくれたその心意気に感謝したい。
また、それを考えながら歌詞を深読みしても面白い。
では、各曲について簡単な感想など。
【1 Shine / MARK BOALS】
マーク・ボールズと言えばやはりイングヴェイ・マルムスティーン・ライジングフォースでのパフォーマンスを思い出す。特に好きな「トリロジー」アルバムで歌っているので数百回は聞いている声だな。
いや、しかし待てよ。
この曲はマークの声ばかりではない。
複数名のヴォーカルが参加しているようだ。
改めてクレジットを確認するとなんとまぁ豪華なメンバー。
自分にとってなじみのある名前だけでもドリームシアターの Charlie Dominici , プライマルフィアの Mat Sinner , アングラの Edu Falaskhi , Jeff Scott Soto などなど。
他にも知らないアーティスト含め総勢11人で歌っている。
まるでどこかのチャリティプロジェクトを彷彿とさせるのだが、メタル界で言えば当然、Hear'n' Aid の「Stars」だな。
どちらの曲もメタル畑のアーティストは良いメロディを書くな。
Stars は重厚なイメージだが、Shine はもっと明るく、震災にあった人々に希望を与えるような歌詞と曲調になっている。
その歌詞だが、一部を抜粋。
Shine, Shine like the sun
Shine through the darkness
~中略~
Now so many are lost or forgotten
Over whelmed, and they feel like nobody's there
We can open our hearts with love and shine !
「太陽のように輝け! 闇を通して光を放とう
今多くの人々は路頭に迷ったり忘れられたりして
圧倒され、まるで誰もそこにいなかったように感じている
愛と輝きがあれば我々は心を開くことが出来る」
RIOTのモットー「Shine On !」のように前向きな内容。
そして報道から見落とされがちな人々に対しても希望と愛を送る、そんなメッセージだ。
ま、これが1曲目というのはキマリだな。
【2 I'll Cry For You / EDGUY】
名前は知っているが、曲を聞いたこともないしバンドの概要も知らなかった。
ドイツ出身のパワーメタルバンド。
調べるとハロウィンやガンマレイに影響を受けているらしい。
なんでそんなおいしそうなバンド知らなかったんだろう?
恐らくアルバムカバーが以下↓のようなイメージだったので、食指が伸びなかったのだろう。
そして本曲。
クレジットでは作ったのが Nick Graham と Joey Tempest だ。
ん?
なんだEUROPEのカバー曲じゃないか。
アルバム「Prisonners in Paradise」に収録されていたらしい。
確か自分のレコード棚にも収納されていたはずだが、曲を覚えていない。
確か「Prisonners ~」アルバムはカバーアートが微妙でヘビーローテーションでは聞かなかった(いや、カバーは関係ないだろ)。
それでもそこそこ聞いたはずだし、この曲はシングルカットもされたらしい。
それなのに覚えてないなんて・・・
さて、オリジナルとEDGUYバージョンの比較をしてみます。
イマドキは簡単にほとんどの曲を聴くことが出来ていいですね。
メロディーラインはオリジナルに忠実。しかし、アレンジがアコースティック。
後半で(アコースティック)ベースらしきものとドラムがシンプルに鳴っていますが、ほとんど歌とアコギ。
ま、しかし、良い曲はアレンジが変わっても良いということだな。
【3 Higher High / EPICA】
こちらのバンドは全く知らなかった。
バンドショット写真を見ると女声ヴォーカルを有したバンド構成。
2003年からEPICAとして活動しているオランダのシンフォニックメタルバンド。結構キャリアは長いようだ。
ん?
2017年にはアニメ「進撃の巨人」の主題歌を演奏していたのか。
そんならどっかで聞いてるな。
CD収録曲を聴きこむ前にバンドのオフィシャルビデオをいくつか視聴してみた。
キライじゃない。
ヴォーカルは若干声が細いもののテクニカルだし、キーボード多用しているところなどいかにもヨーロッパのバンドという感じでいいな。
ただ、男声のデス声。
これだけは苦手。
時流なのかもしれないが、せっかくメロディアスなメロディーを書いてもデス声では旋律も歌詞も分かりにくくなる・・・というのが、既に古い考えなんでしょうね。
ただ、本作についてはデス声封印のため幻想的な曲のイメージを損なわず、良い雰囲気。
【4 Heaven / GOTTHARD】
バンド名は知っているけど曲はほとんど聞いたことがなかった。
へー、スイスのバンドなんだ。珍しい。
クレジット見てみると当時発売予定だったライブアルバムからのテイクだ。
聴く限り、若干のライブ感はあるもののスタジオライブのようにも聞こえる。
ま、バンドの真価はライブで問われるからな。
そして本作品。
常々思うのはメタル界のコンポーザーは良い曲を書くな、と。
ディストーションギターが嫌いな人にはキツイかもしれないが、メロディーだけを抽出して聞いてみてほしい。良いから。
バンドの歴史を見ると311の前年、交通事故でメンバーを失っているとのこと。
そんな彼らが苦境を乗り越えて日本のために楽曲を提供してくれているという事実が嬉しい。
【5 The One / GRAND ILLUSION】
こちらも知らないバンド。
ヘビーメタル天国のスウェーデン出身というだけで、期待できる。
おまけに当時のAVALONは良質のバンドを有していたし。
あら、ま、お写真を見ると重鎮じゃないっすか。
ここまで比較的穏やかな(CDの性格上にもよるが)曲が多いような気が・・・
でも、待ってろよ。
RIOTが控えているからな(笑)
【6 No Justice / HAREM SCAREM】
有名バンドですね。あまり聴いたことないけど(苦笑)。
ここまで見てみると、自分のメタル好きも随分偏っているな~(ジャンル的にも時間軸的にも)と思ってしまう。
ま、昔はちょっと気になるバンドをYoutubeでチェック!なんてことも出来ないので、CD買うか(借りるか)ラジオで情報を得るかしかなかったからな。
さて、曲だ。
クレジットには敢えて「No Justice(2011)」と記載されているので、既発表曲のリ・レコーディングだろうか。それともリミックスか。
歌詞を読んでみると、「世界の紛争についてわずかながらの希望はあっても決して楽観できない」様子を歌っているようにも思える。
曲調も全体的にダークでサビの中にわずかな光明が見いだせる?というようなアレンジになっている。
【7 Street of Broken Dreams / LANA LANE】
意表をついてバンドではなく女性ヴォーカリスト個人名義。
どこかで名前を聞いたことがあるような気もするがほぼ白紙。
調べると、なんと90年代から活動しているミュージシャン。
ミュージシャンでもある夫のエリクとずっと作品を作り続けているようだ。
バンド紹介を読むとプログレッシブにも傾倒しているらしいが、本作は構成も楽器編成もいたってシンプル。
シンプルなだけに朗々と歌い上げる彼女の声が心に染みこむ。
そしてこの曲は(恐らく)震災のことを知り、書き、レコーディングした曲だということ。
いや、書いたのが震災後かどうか正直分からない。クレジットには2011とあるだけなので。
しかし、同時にレコーディングしたのが2011年4月24日とあるので、おそらくそうなのであろう。
これだけのクオリティの曲を短期間で書き上げるプロの技に脱帽&感謝。
【8 Nothin' Ever Hurt Like You / LAST AUTUMN'S DREAM】
いきなりオルガンで始まる古いハードロック的な香りのするナンバー。
あ、もちろん初めて聞くバンドね。
いや、この曲、いいですよ。
エッジの効いたギターに哀愁のあるメロディー。
あ、好きだと思ったらスウェーデンのバンドだ。
ヴォーカルであるMikael Erlandsson の声もハスキーで湿っぽくて(どっちだ?)すごくいい。
80年代のオーソドックスなロックですという感じもする。
このバンド、もっと聞いてみたいな。
そしてこちらも前曲同様、2011年作&レコーディング曲。
みんなどんだけ日本のために頑張ってくれたんだ!
【9 Wings Are For Angels / RIOT】
まだRIOTVと名乗る前のRIOTです。
マークリアリが微笑しています。
この写真を見るだけで泣いちゃうな。
その Immortal Soul のライナーノーツを久しぶりに読み返して、合点がいった。
その中で新曲として演奏されたのがこの曲「Wings Are For Angels」だ。
つまり「Immortal~」アルバムの発売に先駆けて(それもかなり前に)バンドは新しいマテリアルの準備を始めていたのだ。
2009年のリユニオンツアーの後もRIOT特有のマネージメント問題に振り回されるわけだが、明らかに新生
RIOTを目指して新作づくりを開始し、完全復活をもくろんでいたのだ。
という、怒涛の1年間を経験した。
従って当時のRIOTにとっては大切な楽曲であったものを特別なCDに寄せてくれたのだ。
改めて感謝と天国にいるマークに安らかに眠ってほしいと祈るばかり。
ちなみに。
アーティストからのメッセージ。
恐らくRIOTのものが最長。
ま、長けりゃいいってもんでもないんですが。
その内容も涙チョチョ切れるので、一部を抜粋させていただく。
2011年4月25日
友達のみんな、ファン、そして日本の人々へ
~中略~
君達の美しい国がつい最近大惨事に見舞われたことを知った時、俺達は胸が張り裂けそうになり、そして自然によって与えられた苦しみを思い、音楽という自分たちにできる唯一の方法で、復興と癒しに貢献することを試みるために、再び日本を訪れるという新たな決意を固めた。
~後略~
しかし Mark Reale が再びこの地を訪れることはなかった・・・
【10 Far Away (different version)/ ROYAL HUNT】
ベテランですな。
例によって曲は知りませんが、イントロの壮大なアレンジはもしかするとこの企画のために録りなおしたものか?
そして、彼らのライブにおける写真が収録されているが、なんとこれが2011年の4月23日の東京での様子。
わずか1か月半後に来日し、パフォーマンスしてくれたのは驚愕の一言に尽きるし、6月の本作発売に間に合わせたプロデューサーの手腕にも拍手を送りたい。
2011年の11月に彼らが発表したアルバムは「Show me how to live」。
当然311という出来事に影響を受けている状態での製作だろうから、このタイトルが大きな意味を持つ。
やはりヨーロッパのバンドらしい良質のメロディを聞かせてくれる。
【11 Epitome:A Bit Of Me / SOILWORK】
異色のインストゥルメンタル。
ダークな印象に打ち込みドラムが無機質な表情を添えている。
このバンドも歴史が古く、90年代から活動している。
やはりバンド名を聴いたことがある程度だが、バンドの来歴を見るとエクストリームメタルとのことなので、当時としては激しいカテゴリーにいたバンドのようだ。
【12 Hell Is Living Without You / SONATA ARCTICA】
トリは一時期狂ったように聞いていた(そしてライブも見た)ソナタ・アークティカ。
曲の初めから彼らの曲だとすぐにわかるメロディーとアレンジ。
特にキーボードで立体感のある音を作るのが得意な彼らとしては、十八番を十二分に披露した感じ。
しかし、あれ?
良く見るとこれはカバー曲。
オリジナルはなんとアリスクーパー??
あ。
なるほど、曲づくりに参加しているのが Desmond Child, Alice Cooper, Jon Bon Jovi, Ritchie Sambora だ。
曲が悪いわけがない布陣だな。
それを上手にソナタ風に料理しているわけだ。
実はバンドメンバーであるトニー・カッコからも涙ぐんでしまうようなメッセージが届いているが、ネタバレが過ぎるのもアレなので、割愛する。
ただ、彼のメッセージの一部にこんな文章があるので紹介してこのエントリーを結びたい。
この曲のリリースは、この先もずっとこのヴァージョンが唯一のものであり続けるだろう。
これは、日本の友達である君たちに捧げる曲なんだよ。
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