【青いエアーコンプレッサー:スティーブン・キング】 自作を大家に笑われた作家が激怒し(ん?怒っているのか?)、4馬力の青いコンプレッサーを使って大家を殺害するというシンプルかつショートストーリー。
超短編の中で
キングお得意の情景描写を始めるよりも早くスプラッターシーンが始まっちゃったオハナシ。
若気の至りなのか、超B級映画張りの描写がクサくてよろしい。
それにしても4馬力のコンプレッサーが普通の家にあるのかね。
4馬力≒3Kw・・・って、ちょっと広いリビングに使うエアコンばりの容量だよ。
コイツは殺人もラクラクですね♪
【ネット:ジャック・ケッチャム&P・D・カセック】
男女がグループチャットから抜け出し、メールでやり取りするようになり恋愛に発展する・・・という、今時なプロット。
このテの話ではお決まりの「お互いこんなはずじゃないと思ってた」というパターンなのですが、このお話ではどちらかというと殺人を犯した男(アンドリュー)のほうは意外と正直者だったというところ。
女(キャシー)も嘘をついていたとは言えないのかもしれないが、決定的な部分をオブラートに包んでいたため、アンドリューがブチ切れるというオハナシ。
ま、男女の行き違いはただでさえあるのだから、ネットで繋がっただけでヒトを信用しちゃだめだよ、というワイドショーのMCが当たり前のように言うセリフを言うつもりはない。
でもね。
みんな、キレるの 早いよ(笑)
結局は2人を繋いだネット、媒介したコンピュータを凶器にしちゃったのね。
ちなみに著者の一人であるケッチャムは、ラヴクラフト~ブロックの系譜に続く作家なんですね。すでに他界していますが。

【ホロコースト物語:スチュアート・オナン】
確か、スチュアート・オナンはキングとの共著がありましたね。邦訳されていませんが。 読んでいないので内容は分かりませんので、オナンの作品にはこの作品で初めて触れました。
『ホロコースト物語』と呼ばれる主人公はその名の通りナチの虐殺のなか生き残った人物で、それをもとにフィクション小説を著した作者として登場。
彼がアメリカのテレビプログラムにゲストとして召喚され、住処であるイギリスを発つところから始まり、インタビューを受けるところで終わる。
ホロコーストでの経験を洗いざらいブチまけてスタジオを混沌に陥れてしっちゃかめっちゃかになるのかと思ったら、何も起こらずに終話。
え?
これで終わり??
途中、なにか見落とした???と不安になっているところで、いまこれを書いています。
それとも母親に頬を触られることにより何かのスイッチが入るはずだったのか?
小説の主人公は完全に作者と同一人物なのか?
はたまた自分以外の子供たち全てが殺されたこと自体が妄想だったのか???
ただの擬人????
作品はすっかり訳が分からないまま終わってしまったのですが、昔行ったブーヘンヴァルト強制収容所のコトを思い出しました。
確か仕事でWeimar郊外のホテルに宿泊した際、あいた時間に偶然訪れたのです。
もちろんドイツ語はよくわからないので、Museumの文字と、観覧無料に釣られて行ってみたのだと記憶しています。
そこは丘の上で恐らく冬になれば寒風吹きすさぶ場所。
恐ろしく寒々しいだけでなくその歴史を考えればそれだけで鳥肌がたつようなそんな場所でした。
はっきり言って20年以上前なのでディテールは覚えていませんが、広島の原爆ドームとは異なる異様な雰囲気は今でも覚えています。
あえて本作では「ホロコースト物語」と冠するわけですから重厚なテーマが隠されているような気がしますが・・・
ま、少し時間をおいて再読してみましょう。
【アエリアーナ:ベヴ・ヴィンセント】
さて、先日「飛行機系ホラーアンソロジー」として刊行された『死んだら飛べる』を編んだのがベヴ・ヴィンセントですが、今回は素晴らしい作品を提供してくれています。
異能の少女(のように見えるけど実はイモータル?)と女性警察官との出来事を描いた作品。
しかし、少女アエリアーナの言及されない設定とか、本作の前後の物語とか気になりだしたらいろいろ想像してしまう。ただひたすらたんたんと危害を加えるものとの戦いを描写しているが人物や時代背景などを考え始めるとキリがない。
うん。
この作品を読んでヴィンセント好きになりましたよ。
ちなみに『死んだら飛べる』に寄せた作品は「機上のゾンビ」だったので、ちょいとスプラッター寄りだったんだよね。
【ピジンとテリーザ:クライヴ・バーカー】
キタ~!!!!!
一時期(学生時代だったかな?)超絶ハマったクライヴ・バーカーの短編です。
90年代の作品のようであり、ロンドンをテーマとしたアンソロジーに寄稿された作品のようだ。
まさに好きだったころの彼の特徴であるエロ、グロ、からの宗教や人類に対する痛烈な風刺があったりして、短いながらも楽しめて考えさせられる作品。
いみじくも本書巻末にある「解題」のように『皮肉たっぷりに描かれる「宗教」の欺瞞と卑俗は、まさに2020年の今にもつながるテーマだ。』
やばい。
キングの新刊発売が近いというのに、バーカー熱が再燃しそうだ(笑)
ん~~~~~
この本持っていたはずなんだけど、行方不明・・・
【世界の終わり:ブライアン・キーン】
この作者、ゾンビ小説「The Rising」でブラム・ストーカー賞の新人賞的栄誉を受けたヒトなので、てっきりゾンビ系・スプラッター系のお話かと思ったら違う。
冒頭部分を読んで、地球温暖化による異常気象で世界が終わるのかと思ったらそれも違う。
人生に絶望した男がどんな方法で世界が終わるのか、またはどんな方法で自殺できるのか、考えをもてあそぶ話。
結局最後でドザエモンになるのかな?と思ったけどはっきり言及されず。
最近流行りの(オイオイ)自殺する人々の一部はこんなロジックを持つのだろうか。
もしそうなら政府の自殺対策部会のメンバー(?)にはこういう作品を読んでほしいものですね。
原題が『An End to All Things』なので、この邦題はどうなんだ?とも思いますが。
【墓場のダンス:リチャード・チズマー】
なんと筆者のチズマーはキングとの共作「Gwendy's Button Box」を著したヒト。
未訳のため入手していませんが、あらすじを読むと「ん?こんな筋の映画なかったっけ?」。
物語の舞台がキャッスルロックのようなので、共著とはいえキング御大のコト、いろいろ伏線張っちゃってるんだろうな~♪
さて、本作品は非常に短いものです。
冒頭、主人公が墓場かの駐車場いる場面。
それも夜中。
それだけで嫌な予感ですね。
おまけに筆者であるチズマーはホラー専門誌『セメタリー・ダンス社』のオーナー。
当然キング作品であるペット・セマタリーから「蘇り系」のストーリーを連想してしまう。
しかし、主人公及び家族の背景はほとんど語られず。
また、あるメモを見つけて自殺を決意する主人公なのに、そのメモの内容は語られず。
(15年前に)彼女が死んだのは主人公の手によるものなのか、ほのめかしているもののはっきり言及されず。
ディテールを書かないことにより想像力を働かせて楽しむ作品に仕上がっている。
【炎に溺れて:ケヴィン・キグリー】
幽霊屋敷(遊園地の)へこども3人だけで行っちゃうオハナシ。
幽霊屋敷と言えば多くの人が名作映画から『シャイニング』を連想すると思いますが、自分としては初期の名作『呪われた町』を思い出さずにはいられません。
遊園地とはちょっと離れた丘の上にあるというところが、まさにソレ。
そして大量の蛾が襲い掛かるところなどは、「小さい生き物が沢山襲ってくるとそれだけで怖い」ダーク・ハーフなんかを思い出させます。
そして登場する3人の少年の描き方はスタンドバイミーの登場人物やITのルーザーズクラブの面々のようですね。
あ、背高のっぽのエティエンヌ・ラルーはペニーワイズの代わりでしょうか。
本作は書下ろし作品ですが、いろいろと納得いかない部分が。
例えばエティエンヌ・ラルー。導入部分ではいかにもずる賢くて、狡猾なヤツのように描かれているが、終盤、子供にやっつけられちゃう。それもいとも簡単に。やはり子供がちゃんと勇気をもって接すれば悪は駆逐されるということなんでしょうか。
最終的に焼死してしまったようにも読めるが、そんな所業を子供に課してしまうのは、どうなんだ?
ただ、筆者が作中で『子供が恐怖体験を通じてオトナになる』ことを強調しているので、身も(?)心も強力になってラルーをやっつけるのはわかる。だからこそ、殺しちゃっていいの?とも思うのだが・・・ま、小説だからね。
【道連れ:ラムジー・キャンベル】
出ました。ラムジー・キャンベル。
舞台は遊園地なので前作「炎に溺れて」を若干引きずりながらのスタート。
こちらでも暗闇が表れるものの、恐怖は主人公ストーンの心の中にある。
一安心したところで、あの人影が自分の手をとっていることに気付くのです・・・
【告げ口心臓:エドガー・アラン・ポー】
さらに重鎮の作品が続く。
古典的なホラーストーリー。
主人公が語る1人称形式で進んでいくが、つまりこれは狂人の妄想だったのか?
いや、ほかの人間よりも感覚が鋭いだけなのかもしれない・・・
へぇ、近年映像化されていたのですね。
【愛するお母さん:ブライアン・ジェイムズ・フリーマン】
これはもう一言。
星新一なみのブラックジョーク。
本書のための書下ろし。
【キーパー・コンパニオン:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト】
この作家、どこで名前を聞いたんだっけ????
としばらく悩んでいましたが、やっと思い出しました。
イモータルの少女の話し、モールスを読んだことがありました。
ところが本が見当たらない・・・
せめて書影でもと思ったのですが、行方不明です。
でも、モールスの印象は素晴らしく良くて、北欧の静かな寒さと青春小説がうまく合体して切なくも美しいストーリーだったと記憶しています。なんでこの本を買ったのかさえ覚えていませんが。
ちなみに、「ぼくのエリ」という題名で映画化もされたんですね。
モールスでも語られるようなホラーと青春時代の独特な感覚、若者だからこそ感じる挫折や理不尽な環境に対する憤りなど、ヨン節全開です。
あらすじは・・・ラヴクラフトに傾倒した主人公が召喚したと思っていた異世界のクリーチャー、実は彼が見下していた友達の仕業で常に見えない目で彼を監視し続ける・・・というもの。
難を言えば前半のラヴクラフト然としたおどろおどろしい雰囲気は独特でいいのですが、途中から一転、若者の恋愛を絡ませたことでいきなり大衆向けエンタメ化するところに若干戸惑いを感じるのですが、オタクなゲームからのホラーへと続くB級感が好き。
スポンサーサイト
コメント