ミスターメルセデス シーズン2を見ました。原作とは違うけど。これはこれでワクワク要素が満載でした。

監督:ジャックベンダー
脚本:デヴィッド・E・ケリー
原作:スティーブン・キング

ミスターメルセデス シーズン2 テレビシリーズです。
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原作ではこのシーズン2がシリーズ最終作として「任務の終わり End of Watch」という題名で発刊されています。原作読了時の感想は拙ブログ(第2版)でどうぞ。

さて、例によってキング好きのワタクシとしては作品そのものの評価だけでなく原作との差異も気になるところなので、その辺も気にしながらの鑑賞となりました。


気づいたトピックをランダムに上げていきます。

【探偵社設立について】

物語冒頭、ビルが立ち上げた探偵会社「ファインダーズ・キーパーズ社」について触れられる。
商売のためとはいえ弱い者いじめをしているような仕事はしたくないとビルが発言する。ストーリーが進むにつれて社屋はまるで「ホリーとジェロームのたまり場」のようになっていくので、わざわざドラマの中で描く必要はあったのだろうか?と思ってしまった。

【ブレイディの治療について】

植物人間状態のブレイディが入院している病院の主治医、フェリックス・バビノーが妻コーラにそそのかされて未承認薬を投与するというところは原案通り。
ところがその後の流れが面白い。

なかなか結果が出せないーつまりブレイディが覚醒しないーため、自身の立場が危うくなり、同時に夫婦間の関係もぎくしゃくする。結果的にブレイディが目覚め、バビノー医師のところへやってくる。そこで「両者が利益を得るような」提案をする。
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どっかの首相の口癖みたいですね。ウィンウィンってやつ。

ブレイディが「薬のせいで」良心を獲得し無罪を勝ち取るため、そしてバビノー夫妻は未承認薬の投与ならびに勝手に脳外科手術を施したことをチャラにするため、結託して『薬のおかげで犯罪者が更生した』ことをアピール。

いや~、個人的にはどこまでいってもブレイディ・ハーツフィールドは悪人であってほしいですね。もちろん原作でもそのように書かれているので、この展開には肩透かしを食らいましたよ。

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【ブレイディ(の遠隔操作)により殺害された人物】

まずは、看護師のセイディ。
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母娘だけで生計を立てていて、本人は癇癪の持病を持っていながらも必死にブレイディの世話をしているのに、彼に利用されて自殺させられる。
結局自殺がブレイディの仕業だと立証されることはなかったので彼女の母親にとっては今でもビルは事件についてこそこそ嗅ぎまわっている元刑事の探偵という位置づけでしかないだろうな。

そしてアル。
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病院内でカートに乗せた図書を配る仕事をしている役柄。
思わず「刑務所のリタ・ヘイワース」(映画では「ショーシャンクの空に」)を思い出してしまった。どちらも強烈ではないが憎めないキャラクターなのだが、アルの場合は最終的にビル・ホッジスを殺害しようとして撃ち殺されてしまう。

実は彼には通信機能付き廉価ゲーム機ザピッド(廉価ではないが任天堂Wiiなどがにているのかな?)を子供たちに送り付けて洗脳により「自殺を誘発させる」ための手助けをするという重要な役割が原作にはある。

しかし本作ではただ検事補の犬を殺害して同居している兄(アルは軽い知的障害者と思われる)の喉をかっさばくという役目を終えると死んでしまうわけだが。

アルを演じるマイク・スターの演技が気に入った。
当然ブレイディに精神を乗っ取られている間だけ悪さをするのだが、その表情の切り替えや動作時の体の使い分けがやはり経験の多い役者だなと感心した。

【ザピッドについて】

本作にも一応出演するが、前述のゲーム機のこと。
本来ならばこの機器を通じてブレイディがいろんな人物を洗脳するというもの。
原作ではジェロームの妹も危うく殺されかけるわけだが・・・
洗脳されるための「入口・ポータル」として登場する小道具だが、映像ではあまり存在感はなかったな。

アルがザピッドで遊ぶのが好きだから最も洗脳される機会が多かったように描かれている。

【ジェロームの描き方】

本作ではせっかく大学に進学したジェロームがなじめない部分をさらっと描いています。
しかし、おそらくこれは「ミスター・メルセデス シーズン3」に関連してくると思います。
原作では少なからず関係しています。ただ、時間軸は違いますけど。
どちらでの「もっと探偵の仕事を手伝わせてあげりゃいいのに」と思いました。

【ホリー・ギブニーの役割】

シーズン2ではビルの同僚になったホリーですが、相変わらずその魅力は健在。
シーズン1を見た時にも書きましたが、ホリー役を演じるジャスティン・ルーペの演技が最高です。
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髪型や服装だけではなくもちろんその表情の作り方が秀逸。
他の作品ではこんな感じです。
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【ブレイディの脳内世界】

映像では便宜上「ブレイディの(地下)部屋に彼の精神が閉じ込められている」ような描き方をしている。例えば、バビノー医師がブレイディの脳を開いて意識が覚醒するように手術を行う場面で座右骸骨を開くと仮想部屋の上から明かりが差し込むような描写。

ブレイディが覚醒して病院から逃げ出すときにも、通常なら筋肉が萎縮して長期間のリハビリが必要なはずなのに歩いて逃げ出すことができたのは脳内仮想部屋で筋トレしていたからではないかと思わせるように作ってある。

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これは面白い描き方でしたね。

【そして驚愕のラスト】

ホリー・ギブニーとともに非常に楽しみにしていたのがルー・リンクレイターを演じていたブリーダ・ウールの演技。
作中では元ブレイディの同僚で友達が少なくレズビアンであり、男勝りの性格。
そんな彼女がブレイディに刺されることで心的外傷を受け、乗り越えるためにブレイディが以前の人格と異なるか否かを裁判で証言するという場面がある。

それに先立ちブレイディと1対1で対面するときの彼女の表情がすばらしい。
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同一人物なのにずいぶん印象が違うな~。

んで。

原作ではハッピーエンドの後ビルが死んでしまうのですが、テレビでは裁判で証言した後のルーが自作の3Dプリンター製ピストルでブレイディを撃ち殺しておしまい。
そのピストルの作り方を彼女に教えたのはブレイディだったというオチ。

結局このお話はブレイディに心身ともに傷つけられたルーの再生の物語だったのかな。
最後にルーに全部持ってかれたのですが、「シーズン3」が控えているのでビルはまだ元気ですよ~♪

ただし、それまでと違い雰囲気がかなり異なっているので(原作では)映像でどのように料理しているか楽しみです。

【裁判シーン】

ブレイディがもしかしたら無罪になっちゃうんじゃないか!という場面で傍聴人が騒ぐが、その中には娘と孫娘を奪われた老人も。

それにしても、大量殺人鬼が医療のために貢献するという理由で無罪になるかもしれない・・・あるいは弁護人の力量によって罪の重さが変わる・・・など、現代アメリカの司法制度にも一石投じているような作品になりましたね。

シーズン3ではたぶん倒錯→盗作ネタになるんでしょうね。


【おまけ:フレッド】

ビルが飼っているリクガメ。
やはり亀は重要です♪
作中でも「ウミガメじゃない、リクガメだ!」とビルが訂正する部分が何回か出てくる。
製作総指揮にも加わっているキング自身のこだわりでしょうね。

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プロフィール

aquavit103

Author:aquavit103
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丙午生まれの♂。
40歳から始めた自転車に乗り、20歳で出会ったRIOTというバンドを愛し、14歳から読んでいるスティーブン・キングの本を読むことを至上の喜びとしています。