翻訳ものの小説は好きですか? 海外の小説が読みづらいのはなぜ?

読書体験・・・と言いましても、ワタクシ基本的に遅読体質のため多くの『本のムシ』の皆さんに比べれば読書量が少なくて恥ずかしいほど。
でも、最近は翻訳した小説を読むことが多いので少し考えをまとめてみました。

思えば、自分の音楽の好みと読書傾向の好みって、似ているかも知れません。
音楽の場合、詩の内容よりもむしろ「メロディの良さ」から入るタイプです。もちろんその後好きになったアーティストの詞が気になったりするのですが。
読書についても「描写」よりもむしろ「筋立て」のほうが気になるタイプです。

んなわけで、特に日本の作家じゃないといやだ、とか、海外(おい、アバウトだな)の作家じゃないと読まない・・・ってわけじゃないのです。
つまり、面白けりゃいいんです。
「アノ作家の情景描写が素晴らしい」とか、「ココでこんな比喩を使うのか~」とかいうのは、あんまり興味ないんですね。

以前、読書好きの知り合いから「映画化されているスティーブン・キングの本を読んでみたい」というリクエストがあり、作品をチョイスすることにしました。
その人は今までも映画化作品の原作を読むのが好きで読書量は多いようなのですが、海外の小説を読んだことがなかったそうです。

ふむ。

しょっぱなからマグナムオーパス的な「IT」や「ザ・スタンド」、はたまた「暗黒の塔」シリーズはあまりにもヘヴィーなので除外。
ってか、本を貸すときに重くて仕方がない。

全ページ数が少なく、サクっと読める作品(短編集除くと)・・・




ないな(爆)

いや、しかし、ここで見捨てるのも薄情だと思い、昔の記憶を思い起こしてみると・・・

最適な作品があったじゃないですか。

刊行当時毎月1冊ずつ(各巻150ページほど)、計6巻ですが、各巻読み進めていくと「次が待っている」というお楽しみ付きの『グリーンマイル』。
フランクダラボン監督による映画化作品の日本公開は2000年。
そこそこヒットしたし、映画も満足できる(キングファンから見ても)出来だったのではないでしょうか。
映画チラシ

原作(文庫本)を手にしてみると、その薄さは本嫌いの人にも読書意欲を起こさせるほどです。
文庫本1巻

そこで、「返却はいつでもいいよ~」ってな具合でお貸ししたのですが・・・

1週間後:「読み始めた??」 「あ、これから」
3週間後:「読んだ?」  「まだ」
5週間後:「?」 「やっぱり海外小説、ダメみたい・・・」

という結末に。
あちゃー、これでもダメだったか・・・
ま、ちょうど生活リズムが変わった時期だったようだから読書する心の余裕がなかったのかもしれませんね。

では、海外小説が苦手な人にとって何が障害となっているのか。
考えてみました(前置き長い)。

【会話部分の余白】

本を読むときに、「うわ!字が多い!!」という書籍は多々あると思います。自分のイメージとしては昭和中ごろの本は字がびっしりで時々旧仮名遣いがあったりして読みづらいったらありゃしない。もちろん出版社や作家、編集者、(翻訳物は)翻訳者・・・いろいろな要素によって本の印象は変わってくると思うのですが。
本大好き人間の中には、「びっしりと文字が詰まっている本のほうがむしろいい」という人もいるでしょう。
自分的には日本の作家の本と海外の作家のそれは余白が違う印象あります。

例えば翻訳もの(白石朗翻訳)のグリーン・マイル第1巻104ページ(惜しい)の会話部分はこんな感じ ↓
104ページ

日本の小説、山田悠介のスピン(たまたま自宅にあった)103ページ(♪) ↓
スピン103ページ

いや~、悪意を感じるほどの差(笑)ですが、イメージ的にはこんな感じかな~と思っています。
もちろん同じ日本の小説でもページ1面にびっちり文字が書かれてある作品もあります。昔読んだ野坂昭如の火垂るの墓とかね(あ、思い切り昭和の作品ですね)。

もしかすると日本の作家はあえて空白を作ることによって「行間」というか「隙間」で読者に考えさせる余裕を与えているのでしょうか。
隙間のある小説に慣れている人には、ビッチリ書いてある小説は抵抗あるかもしれませんね。

【名前の親和性】
ん~、これは説明が難しい。
単純に『名前の多さ』という観点からすれば日本人の名前(姓も名も)って、ものすご~く多いと思うんですよね。その中には初めて聞くような、あるいはルビふってくれないと読めない名前があったりもします。

それでも外国人の名前はなかなか覚えられない。

例えばアメリカ人。
ジョンとかマイクとか、分かりやすいのはまだしも。
キング作品の登場人物で言えば、リーランド、アランナ、エデュアール、スキーナ、ウェンデル、ジェローム、ユアニタ、ファーナルド・・・。 ね、馴染みのない名前あるでしょ?
さらに厄介なのは”愛称”です。
もちろん作中で登場人物間の関係から「堅い」呼び方と、フランクな呼び方を使い分けるのは分かるのですが、エリザベスをベスって呼ぶならまだ分かりやすい。
よく登場人物が自己紹介するときに「〇〇って呼んでくれ」みたいな表現があるのは欧米のお話しっぽいですよね。日本の場合、名前の呼び方は「相手に任せる。しかし、自分が目上なのにフランクな呼び方をされると怒る」(笑)というパターンが多いのでは?

だから名前とかけ離れた愛称を使われると(また、本来の名前と混在すると)、時々混乱してしまう。

あと、同じ名前なのに言語によって違う日本語になる場合。
例えば Michael
英語ならマイケル。
ジャクソンファミリーの有名人を思い浮かべる人も多いでしょうが、この人も業界長いっすよ。
マイケル・ダグラスね。ブラック・レインが印象に残っています。
マイケルダグラス

フランス語ならミシェル。
オバマ大統領夫人ですよ、ええ。
ミシェル夫人

ドイツ語ならミヒャエル。
おや?ここまできて思いましたが、この名前、男女関わらず命名されるんですね。
ま、たしかに元祖は大天使ミカエル。天使は(人間に模して描かれるけど)性の区別はないんでしょうね。
ミヒャエルといえばモモの原作者ミヒャエル・エンデくらいしか思い浮かばない。
ミヒャエルエンデ

ポルトガル語ならミゲル。
ショーシューリキー!!のミゲルくんが懐かしい。
ミゲル


ご先祖が出身地の国によって姓に特徴があらわれることもあるのですが、小説の中で「その姓ならドイツ系だな」というセリフがあってもイマイチ日本人にはぴんとこないものです。

かように名前に対する親和性が日本人とは異なるので、『登場人物紹介』にしおりをはさんでしょっちゅう見返したりすることも多いですね。

【単位の違い】
これこれ。
中学生のころは苦労しましたよ。
そのうち仕事をするようになるとSI単位以外にも触れる機会が多くなったので、徐々に慣れましたが。
ヨーロッパは良いのですが、アメリカの場合 華氏、ヤード、ポンド、マイル、エーカー、オンス、ガロン・・・・・・ピンとこない単位が多いですね。
一番身近で、小説の中でもよく使われるのは気温と長さではないでしょうか。

長さは比較的とっつきやすいです。なぜって、インチは寸、フィートは尺とほぼ同じだからです。
えーと、確か1inch=25.4mm、1feet=304.8mmだったかな。
例えば「男の身長は6.5ftで、低いほうではなかった」といえば、2m弱(1981.2mm)の身長になるわけです。

あとは気温ね。
これが曲者。
摂氏から華氏に換算する方法は・・・・・『oC × 1.8 + 32= oF』
一覧表にすると ↓ こんな感じ。
華氏―摂氏 一覧

ポイントは人間にとっての快適温度と不快温度を頭に入れておくことでしょうね。
 0℃⇒32℉
20℃⇒68℉
35℃⇒95℉

残りの単位が出てきた時は・・・だいたいこのくらいだろう!と想像だけしています(笑)。

【文化の違い/宗教のバックグラウンド】
これ。
厄介です。
例を挙げるとよく分かります。
スティーブン・キング作の「心霊電流」。
P_20191006_171015_p.jpg

読了した時のエントリーにも書きましたが、原題はRevival。
いわゆる外来語的な扱いではリバイバル(復活)という言葉が一般的ですが、日本人がイメージする意味合いとは別の意味で、①イエス・キリストその人の復活(生き返り) ②信仰自体の復興や信仰復興のための伝道集会 という意味があるそうです。

恐らくキリスト教信者にとっては物語のあちこちに「なるほど!」と納得できるところが多数あったのでしょうが、そういう素地のない人間が読んでもピンときませんね。

他にも欧米人は1日靴履きっぱなしとか、湯舟よりもむしろシャワーがメインとか、生活様式の差があるので理解しづらい部分が多いのかも知れません。

【日本語それ自体の特異性】
色んな人が論じている「海外文学はなぜ読みにくい」のかというページを参照してみると、あることがわかる。
バイリンガルの人が「英語で文章を読むときは苦にならないけど、和訳したものは読みづらい」と言うことをきいたことがあります。

外国人から見たらかな、カナ、漢字交じりの日本語は話すことが出きても「読む」ことは難しいでしょうね。

また、「会話部分の余白」でも書いた通り、行間を読むことがことさら強調される言語であることも海外文学との違いですね。

本件、深く掘り下げてしまうと文学自体の存在意義とか活字離れとかデジタル文字への依存などさまざまな社会問題にまで発展しそうなので、(子供のころは星新一のショートショートが大好きだったワタシが)ヒトコトでまとめましょう。

「短くって興味のある本を読もう」(フツウの提案)
スポンサーサイト



コメント

コメント(0)
コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

aquavit103

Author:aquavit103
FC2ブログへようこそ!
丙午生まれの♂。
40歳から始めた自転車に乗り、20歳で出会ったRIOTというバンドを愛し、14歳から読んでいるスティーブン・キングの本を読むことを至上の喜びとしています。