映画『骨の袋』を観ました。原作は大分前に読了したのでディテール覚えていませんが、映像は物語のエッセンスを良く表しているな、と思ったわけで。

COVID-19騒ぎ(加えて季節外れの雪)で自宅でおとなしくしていた休日。
録りためておいた映画を見ることにしました。
スティーブン・キング原作の作品「骨の袋」のテレビシリーズ。
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監督はミック・ギャリス。確かデスペレーションもこの人が監督していると思う。
主演はピアーズ・ブロスナン。

まずは先入観を持つ前に自分の手元にある書籍(初版本:2000年7月発行)にあるあらすじを。(オビに書かれていたものです)

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上巻
 ある暑い夏の昼下がり、妻が死んだ。最愛の妻を襲った、あっけない、何のへんてつもない死。切望していた子供を授からぬまま、遺されたベストセラー作家のわたし=マイクヌーナンは書けなくなり、メイン州デリーの自宅で一人、クロスワードパズルに没頭する。
 最後に妻が買ったものーー妊娠検査薬。なぜ。澱のように溜まっていく疑い、夜毎の悪夢。作家は湖畔の別荘を思い出し、吸い寄せられるように、逃れるように妻との美しい思い出が宿る場所、≪セーラ・ラフス(セーラは笑う)≫へと向かう。そこでわたしを待っていた一人の少女が、全ての運命を変えていくーー。

下巻
 書けなくなったベストセラー作家のわたし=マイクヌーナンは、亡き妻の思い出に引き寄せられるまま、キャッスル郡にある湖畔の別荘、≪セーラ・ラフス(セーラは笑う)≫で無為な日々を送っていた。ある日出会った美しい母娘。まだ見ぬ我が子の面影を宿す幼いその娘は、土地の権力者マックス・デヴォアの異常な欲望につけ狙われていたーーデヴォアとの戦いを余儀なくされるなか、徐々に顕わになっていく妻の真の姿。運命の中心地≪セーラ・ラフス(セーラは笑う)≫で死者が、忌まわしい歴史が甦り、わたしのなかの悪夢と現実の境界が揺らぎ、遠のき、消えていくときーー。

さて、ストーリーのなかで『キング節』というか、彼特有のポイントがあるので押さえておきたい。

1.メイン州およびキャッスルロック(またはキャッスル郡)はキングが独自に創作した(忌まわしき)土地のことで、本作でもセーラ・ラフス(ダークスコア湖畔)がある場所として設定されている。「IT」、「ニードフルシングス」、「デッド・ゾーン」、「クージョ」などでキングファンにはお馴染み。

2.子供が絡んでくるところ。デヴォアの孫娘であるカイラがキーパーソンであり、セーラ・ティドウェル(1939年に失踪した歌手)とマイクヌーナンを繋げる。数々の作品で子供は大人にない特別な能力を有していて、第六感やひたむきに信じる心が問題を打開することがある。

3.マイクヌーナンは作家。他にも「ミザリー」、「ダーク・ハーフ」、「秘密の窓、秘密の庭」、「シャイニング」、「呪われた町」など作家を主人公(あるいは重要人物)に据えた作品は数多い。

4.時間軸を行ったり来たりしながら物語が進行していく。

5.冷蔵庫のマグネットによるメッセージ送信。キングに限らず死者との意思疎通の方法としてアルファベット・マグネットを使う例はあるが、超常現象を扱う際、マグネットや黒板への書き込みなどが使われることがある。

6.他作品へのリンク。キング創作の町、キャッスルロックを軸にして邪悪な意思が牙をむくのは常套手段。映画の中ではマイクヌーナンが新作を出そうとする同じタイミングで数多くの作家が新作発表を予定するのだが、その中にはバックマンの未発表作も。リチャード・バックマンはキングが昔、別名義で作品を発表するために使用していたペンネーム。「偽名癌」でリチャード・バックマンを葬った彼が、自分自身の体験をもとにした作品が先述の「ダーク・ハーフ」。

これらはいずれも原作・映画ともに関連することである。
小説の詳細は大分前に読んだので忘れているが、映画を見て感じ入った部分をいくつか。

* セーラ・ティドウェルの歌唱シーンが素晴らしい。演じるアニカ・ノニ・ローズが30年代のシンガーの雰囲気を上手に演じています。これだけ妖艶なショーを見せられたら若いモンはムラムラするよな。だからって、襲っていいことにはならないぞ。
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* マイクヌーナンの妻、ジョー(ジョアンナ)が冒頭すぐに死亡。まるで近づいてくるクルマ(バス?トラック??)が全く見えていないかのような映像。これはもしかすると暗黒の塔でジェイクがニューヨークの町中で後ろから何者かに押されて命を落とすという場面に似ているように思えてならない。すると、ジョーは死後(あるいはセーラの呪いが解けたあとに?)ミッドワールドへ赴いたのか???
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(これは映画ダークタワーのジェイク・チェンバース)

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(写真左がジョー・ヌーナン。死してもなお夫の心の中だけでなくどこかに存在感を感じる)

* マイク・ヌーナンが創作のために避難する別荘「セーラ・ラフス」でジョーが近くにいることをわずかにも疑わず、彼女の希望を叶えようとする。「イエスは1回、ノーなら2回」でトナカイのはく製にぶら下げられているベルが鳴るところが微笑ましい。

ストーリー的には殺害された女性の呪いを抑えるために殺害グループの子孫が奔走するというものだが、そこに児童虐待やシングルマザー、後見人制度等々、現代社会が抱える問題も表現されているところが面白かったですね。

小説に関しては後年発売された新潮文庫刊の装画(藤田新策氏による)が物語の舞台となる場所の不気味さを上手に表現していますね。

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aquavit103

Author:aquavit103
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丙午生まれの♂。
40歳から始めた自転車に乗り、20歳で出会ったRIOTというバンドを愛し、14歳から読んでいるスティーブン・キングの本を読むことを至上の喜びとしています。