『傷だらけのカミーユ』読了。相変わらず結末が読めないストーリーが怒涛の如く進んでいく作品でした。

ピエール・ルメートルによるヴェルーヴェン警部三部作の3作目。文庫裏のカバーにあるあらすじは以下の通り。

カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女を執拗に狙う犯人。もう二度と愛する者を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠し、残忍な強盗の正体を追う。『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』の三部作完結編。イギリス推理作家協会賞受賞、痛みと悲しみの傑作ミステリ。解説・池上冬樹

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本作品の感想を一言で表すなら・・・解説の冒頭にある言葉を借りれば・・・
『ピエール・ルメートル、やはり一筋縄ではいかない』
である。

結末が読めないのは彼の作品の特徴であるが、今作は特に以下のような理由で混乱させてくれた。

1.人称の表記。作品は主にカミーユの視点とアンヌカミーユの恋人)の視点で語られる。ところどころに差し込まれるのが「おれ」人称。こいつが曲者で、物語前半はおれが誰かなのか特定する表記がないため、完全に脳内人違いをしていたため、ハテナマークが飛び交っていた。

2.外国人の名前。そもそも、映画でも小説でも外国人の名前って覚えにくくないですか?ま、加齢による記憶力の低下も一役買ってるんですがね。
キング作品を読み漁ったおかげ(他にもジョー・ヒル、シャーリー・ジャクスン、クーンツ・・・)で英語圏の人物名については多少馴染んでいるつもりです。姓も名も。ファーストネームについては相性なんかもあるので混乱しやすいのですが、英語名なら綴りを予測すれば「あ、あの人のコトね」とピンとくるときが多い。
ところがですよ。
本作はおフランスの著者によるものですから、フランス人の名前がね~。そもそも馴染みがないわけで。加えて本作の「おれ」人称のキャラクターは当初予想していた人物ではなかったので・・・あ、これ書いちゃうとネタバレだ。


さて、ストーリー運びには若干混乱させられたが、「傷だらけのカミーユ」という邦題だ。
ヴェルーヴェン三部作は名前を絡めた題名にしているが、本作のみ男性の名前だ。それも傷だらけ

確かに本作でカミーユ自身は怪我をするわけでもなく、ラストシーンにおいては邪気迫る気迫で身の危険を感じるわけでもないのに、精神的に傷だらけになってしまうのですね。

ところが原題は犠牲を意味する「SACRIFICES」。
文庫本のカバーを外すとちゃんと記載されています。

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最後の最後で本文でもこの単語が出てくるが、現代社会において自身が犠牲になるという人間の少なさと、それ故の美しさ(? 高尚さ??)を解説で指摘しているのが文芸評論家の池上冬樹氏。
これこそが本作のテーマかな。

あ~、それにしてもカミーユが可愛そう。この可愛そうなまま本シリーズが終了してしまうと思うと切ないが、既にルメートル自身は世界大戦をテーマにして作品を上梓している。

ヴェルーヴェン警部シリーズの第1作「悲しみのイレーヌ」が未読なので機会があれば読みたいが、既に完結作を読んじゃったからな~、どうしようかな。
と思いながらもチビで(ここ、共感持てる)偏った性格の(ここも共感できる♪)ヴェルーヴェン警部の活躍を全部読んでみたい!!
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aquavit103

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丙午生まれの♂。
40歳から始めた自転車に乗り、20歳で出会ったRIOTというバンドを愛し、14歳から読んでいるスティーブン・キングの本を読むことを至上の喜びとしています。